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真夜中の贈り物
第16章 ボイストレーニング
 ぎゅっ……

「ひゃうっ……!」

 亜優の身体がビクンッと跳ねる。不意打ちだった。

「フフフ……敏感なんだね……でも、そのまま続けて呼吸して……」
「は……あっ、は……はいっ……」

 乳房を優しく揉み始める鏡花の手。指はあてがったまま軽く肉に食い込むぐらいにして、手の平の部分を浮かせて、クルリ、クルリと円を描くように。

 これも何かのトレーニングなのだろう。そう思って亜優は、くすぐったいのを我慢して再び呼吸した。

 吸って、吐いて。
 ……吸って、吐いて。

 鏡花は何も言わない。黙って亜優の胸を丁寧にあやし続けている。

 ……吸って、吐いて。

 亜優はそのまま続けるしかなかった。

「……んっ」

 吸えば、横隔膜によって押し広げられ、大きく膨らんだ肺が彼女の胸部をぐっと盛り上げる。当然、鏡花の手の中に押し潰される、感じやすい柔肉。

「あっ……ん」

 吐けば、下降していく胸郭を鏡花の手が追って来る。食い込むその指の一本一本の感触を強く感じとれてしまう。
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