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真夜中の贈り物
第16章 ボイストレーニング
「さあ、亜優クン、眼を閉じたまま……立って……大丈夫、私が支えてあげる……そして、ほら、ここと、ここと……演台にしっかりと掴まって……」

 舞台の真ん中の演台に、よろよろと立ちあがった亜優を誘導し、両手を台につかせて、鏡花自身は彼女の背後に回り込み、身体を密着させる。

 目の前に広がる、薄暗く、がらんとした客席。

 ――明日は僕もそこにいますよ……鏡花先輩と亜優のいやらしい姿を、隠れて鑑賞させて貰います。

 彰は電話口でそうも言った。

(ここのどこかで……本当に、今……私たちを見ている……?)

 二階席まであるこの講堂は全校生徒を収容できるほど大きい。しかし、少なくとも客席には彰の姿はなかった。

 どこに隠れているのだろう?

 だが、鏡花は見張られているから行為しているわけではない。催眠ごっこは契約だ。自らの意思で従うからこそ意味がある。だからこそ、ゾクゾクするほどの快楽を与えてくれるのだ。
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