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Memory of Night
第4章 過去

 ――夢を見た。志穂に初めて会った頃の夢を。
 医師に連れられ病室のドアを開けると、そこには白い布を被せられた父と母の姿があった。
 ほんの三十分程前に、両親が事故で亡くなったと連絡を受け、駆け付けたばかりだった。
 母は乗っていた席が悪かったらしく、即死だったのだという。
 父は病院に運ばれる途中の救急車の中で、息を引き取ったらしい。
 凍るような、冷んやりとした空気の中で。
 目の前の二つの死体を見ても、宵にはまだ信じられなかった。
 悪い大人の悪ふざけだと、ベッドに置いてあるのは布を被ったただの人形なのだと思いたかった。
 医師が、二つの死体に近付き、そっと布を取った。
 その顔は、まぎれもなく父と母の顔――朝見た時とは違う、蒼白い、血の通っていない二人の死顔だった。

「……だ」

 声が、震えた。
 宵は、父と母の体を両手で必死に揺さぶりながら叫んでいた。

「やだー!! やだーッ!! 起きろよぉ……! 父さん……、母さん……ッ!!」
「宵くん……っ、やめなさい! 落ち着きなさい!!」

 医師が、宵の体を抱え上げ、二つの死体から引き剥がす。
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