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恋花火
第20章 眠れNIGHT
ロケットの中は声が反響する。


とても狭いので、どうやっても二人密着しなきゃない状況。


だけどタケルは変なことしないって言った。


だから大丈夫。


後ろから抱きしめられる格好なので、背中から温もりが伝わってくる。


それがすごく、心地よかった。


「……私が知ってる陸先輩を信じていいのかな……」

「菜月が知ってる陸先輩はどんななの?」

「えっと……」


陸先輩は、サッカーが上手で、誰より走ってて、真面目で、部員みんなのことをよく見ている。


そして普段は冷静沈着ぽいんだけど、たまに覗かせる焦った顔も照れてる顔も素敵なの。


笑顔なんかもう向かうところ敵なしみたいな。


なんだかんだ言葉にしなくてもエスパーみたいに気持ち読んでくれて、そんで美味しいお好み焼きを作るのが上手。


「や、俺の知ってる陸先輩もそうだけど。」

「え?そうなの?」


そしてタケルは教えてくれた。


今年の夏前、スランプに陥りかけていたタケルのことを、陸先輩は家に連れてったっていうエピソード。


「特に励ましたりとかってないんだけど、めっちゃうめぇお好み焼き作ってくれて。」

「……あれ美味しいよね。」

「おー。明太子もちチーズベビースタースペシャルってやつ。」

「えっ!私もそれ食べた!」

「真似すんなよ」

「偶然だから!」


もしかしたら、あの時それで陸先輩は笑っていたのかな?


数あるメニューの中で、同じものを選ぶ私とタケルのことを。


「……茜先輩がどうのこうのより、陸先輩の気持ちを信じてあげたら?例え茜先輩が陸先輩を好きだったとしても、菜月が気にするところじゃない。陸先輩が菜月を選んだんだから。」

「だって……タケル、悲しくないの?」

「俺は別に。」

「もし、茜先輩が陸先輩を好きだったらタケルは……」

「いいんだって。」


タケルはぐしゃぐしゃと私のあたまを撫でた。


「茜先輩が誰を好きかどうかより、菜月が泣いてる方がやだ」


って……優しく言ってきた。


やっぱりやっぱり


タケルは変わった。


なんかいい人っぽすぎて、優しすぎて








不気味。笑
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