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第12章 送り狼

その日の帰りも送ってもらい、またまた陸先輩のお色気ビーム(？)にやられて、骨抜きになってしまった。


「陸先輩、モテるでしょ……」

「全然。」

「またまた。」

「ほんとにほんと。もう恋人いなくて早何年てとこだしー」

「……たぶんですけど、陸先輩はモテないんじゃなくて、みんな勘違いしてるからだと思います。茜先輩の恋人だって。私もそうだったし……」

「まぁね。周りにそう思わせとけば面倒なことから回避出来るかと思ってたんだ。でも……」

「でも？」

「限界がきたからやめた。」


それは茜先輩が？それとも陸先輩が？


聞きたかったけど、なんとなくそこは聞けなくて…


「着いたー」


そうしてるうちに、あっという間に私の家の前。



「あ、ありがとうございます！」

「いえいえ。じゃーねー」


よく"送り狼"って言葉を聞くけど……陸先輩は本当に送ってくれるだけ。


……って、その先を期待しているわけじゃないけど。


「なんで陸先輩と？」

「ぎゃー！！」


振り返るとタケルがそこに。


「ずっとあとつけてたの！？」

「はぁ？俺んちそこだし。」


確かにそう。そうなんだけど……


「浮かれてんじゃねー」

「いやいやあんたには言われたくないわ！」

「俺は浮かれてません」

むしろ沈んでるよ、そうタケルは呟いた。


「沈んでるって…なんで？」

「うっせぇ」


あれ、このパターンって……


「わかった！私が男の人といたからヤキモチ？」


そんなわけないけど言ってみる。


やっと冗談言えるくらい元気になってきたみたい。


「んなわけねー。自惚れんなバカ」

「バカ！？バカって言った方がバカなんです！」

「バカって言った方がバカって言った方が(以下無限大)」


よく考えたらタケルと話すのは久しぶりのこと。


なのにこのケンカ腰の会話。


小学校の頃から変わらないこのノリ。


「陸先輩はすごい大人なのに。タケルもちょっとは見習えば？」


これも冗談のひとつだった。


なのにタケルは「…だよな。」って


たった一言。


……そんな素直に認められちゃったら、ちょっと困る。