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Complex
第3章 変化
翌日も山口は姿を見せなかった。
仲良くなりかけている堀場も休みとのことで、友香は結局一人でトレーニングをすることにした。
スタッフの方には謝罪されたけれども、元々担当がずっと同じ契約ではない。
それを断っているのは、友香自身の我儘だ。

一人で汗を流していると、聞きなれた声が聞こえた。

「筋肉痛、治った?」
「誰のせいだと思ってるんですか?」

つい、冷たい反応をとってしまう。
綾瀬の顔を見ると、一昨日のことを嫌でも思い出させられる。
顔がにやつかないようにするには、これで精一杯なのだ。

「ね、今日の夜、ひま?明日ジム休みでしょ?時間あるなら、うちの店来ない?」
「あー、ごめんなさい。今日は、高校の時の友達と久しぶりに会う約束してるんです」
「そっか。久々の休みだもんね。その子とはどこで遊ぶの?」

その子。
相手が男だとはまったく思っていないのだろうか?

「ん?」

つい黙った友香の顔を覗き込む。

圭太とはここから電車30分ほどの駅で待ち合わせている。

「なぁんだ。友達連れて、って言いたいけど、遠いかぁ。じゃあさ、もし早く解散になったら、連絡くれる?」
「でも、私綾瀬さんの連絡先、知りませんよ?」
「あれ?あ、そう言えば」

二人とも携帯はロッカーの中。
ペンすらない。
また、教えるよ。

綾瀬はそう言うと、自分のトレーニングのためにその場所を離れた。


なんとなくそんなこともあるのではないかと期待していたけれど。
シャワーを終え、外に出ると綾瀬が待っていた。
今日は、黒のパンツにTシャツ。
そのまま仕事に行くのだろう。

「はい、これ」

渡されたメモには、思っていたよりも細い器用な字で電話番号とアドレスが書いてあった。

「時間できたら、連絡待ってるね」

綾瀬は急いでいるのか、メモを渡すと足早に立ち去る。
友香は、そのメモをどうしていいかもわからずに、スカートのポケットに入れた。
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