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Complex
第3章 変化
「なんで、知ってるんですか?」

「ん?山口君が言ってた」

綾瀬はなんてことはないかのように、アサリのリゾットを口に運びながら言う。

「なんか、場の空気でつい飲んじゃったら止まらなくて」

笑顔で答えたものの。

綾瀬は知らない。
その空気がどんなものだったのか。
飲んでしまったことで、何が起きたのかを。

今日こそは。
気持ちを伝えよう、この関係を明白にしようと思っていたのに。
忘れたい思い出がそれを邪魔する。



店を出ると、車の停まっているパーキングとは反対方向に歩きだした。
動じないようにしながら、友香は綾瀬の横を歩く。
綾瀬がどこに向かっているのかはわかっている。
その先には、いくつものホテルが立ち並ぶ道につながる。

圭太とのことを後悔しながら、けじめをつけようと思いながらも。
結局は何も言葉にすることができないまま、こうして綾瀬の後をついていってしまうのだ。
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