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純の恋人
第10章 国重一の後悔
「事件なんか起きちゃいないんだから、余計な事はするんじゃないよ。今回暴力団と喧嘩した事もそうだけど、あまり手に余るようなら、こちらも考えがあるからね」
「……気をつけます」
これ以上関われば、俺は左遷か。つくづく腐った連中に、苛々が溜まる。だが、今回の件で痛感した。刑事という肩書きがなければ、俺はあまりにも無力だ。こんな腐った組織でも、あいつを救うためにはまだ肩書きを捨てる訳にはいかない。
まずは病院に、真実を確かめに行かなければならない。気をつけるなんて言葉をすぐに吹き飛ばし、俺は病院まで向かった。
病院がクロとはいえ、働いている人間全員が共犯者という訳ではない。むしろほとんどは、何も知らず働いている無実の人間だ。前から通って顔を合わせている実績もあり、俺があいつの病室を聞き出すのはそう難しい事ではなかった。
「あの……国重さん」
部屋番号を教えてくれた中年の看護師は、どこか不安そうな表情をして俺を引き止める。
「驚かないで聞いてくださいね。あの子……記憶を、失っているんです」
「それは知っています、何度も話をしましたから」