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純の恋人
第3章 刑事 国重一
 
 坂本さんは一つ咳払いをすると、姿勢を正し口を開いた。

「実はあなたが事故に遭った日、現場近くでもう一つ、妙な事案が起きていたんです。とある暴力団の男が金品を積み、通行人にある事を依頼したのだとか」

「事故の日に……?」

 私は覚えていないけれど、それは早朝、日もまだ昇りきっていない内に起きたらしい。そんな朝から、事件が二つも同じ場所で重ねて起きるなんて、偶然とは思えない。いや、こうして刑事さんが来ているのだ。偶然ではないんだろう。

「声を掛けられた通行人の男は、断れば面倒になると考え頼み事を引き受けました。しかしその後、警察に全てを話してくれました」

「その人は、何を頼まれたんですか?」

「あなたの事故の目撃者として、通報及び救急車を呼んだ身代わりになってくれ、と」

「私の事故の!?」

「つまりその日、現場には、あなたと通行人、あなたを車で轢いた犯人、そして姿を消した本物の通報者がいた事になります」

 わざわざ通報しておきながら、人を身代わりにして逃げる。不自然な事この上ない。けれど私は、それが暴力団の人間だった事を思い出す。
 
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