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獣日和
第3章 浴室と淡い思い出



「……じゃあ、背中だけ。桜太、後ろ向いてくれる……?」



ドキドキしながら、後ろを振り返る。

そんなふみと同時に「うん、分かった」と返事をして、桜太もふみへ背中を向けるようにくるりと振り返った。




「洗うね……」




震える両手にボディソープの泡を纏わせると、そのまま桜太の背中へ恐る恐る手を伸ばす。

そして桜太の背中、こんなに逞しかったっけ……と不思議になりながら、優しく全体を上下に撫でた。





「ありがとう、ふみちゃん」





穏やかで、嬉しそうな声が浴室に響いても、ふみは桜太の体に触れているという緊張のあまり桜太の笑顔を見ることが出来なかった。

背中を見つめたまま、質問するも。





「洗ったよ……もう、良いでしょ? お風呂上がろう……?」

「ダメだよ。ちゃんとお湯に浸からないと。風邪引いちゃうよ?」





桜太は自分の体を洗いながら、そうふみに返した。




「っ……」




ふみは渋々と、言うことを聞いて浴槽に入るしかなかった。
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