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言われてみれば、単純で。
第1章 おれのきもちはフクザツで。
「もう卒業したら会えないと思いますが」

「会えないの?」

「そうですね。高校違うとこいくと思いますし、確か家も遠いですよね」

「まあ、卒業式まで時間あるけどね」

多分、これは彼女に言ったんじゃなくて、自分に言い聞かせた言葉。
だって、寂しいでしょ。俺目の前にしてもう会えないって言うんだよ。
けろっとした顔して。

「で、あとは、…お元気で」

「うん。元気で生きるよ」

「そうですね。それが一番です。
 勉強頑張ってください」

「キョーちゃんそればっかだね」

「それ以外に言いたいことないですから」

「そっか」

「藤崎キョーより。
 はい、私からの色紙です」

「ボロボロの結果の小テストだけどね」

「ちょうど捨てるとこ探してたのでいいゴミ箱がありました」

「俺、ゴミ箱じゃないよ」

「知ってますよ、丹羽先輩ですよね」

「そうです」


彼女の「丹羽先輩」という声ももうすぐ聞き納めになるのだと思ったら
少し寂しかったけど、なんというか、それを伝える勇気はない。

ただ、今だけは彼女の声が自分のものだけにしたくて。
だから、いっぱい話しかけちゃうんだと思う。
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