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言われてみれば、単純で。
第1章 おれのきもちはフクザツで。
受験シーズン、真っ盛り。
3年は午前授業に切り替わった。
でも、水曜日はお昼を過ぎても学校に残って、放課後図書室に行く。
「キョーちゃん、何してんの?」
「色紙書いてます」
「何の色紙?」
「委員会の先輩の卒業祝い」
そっか、俺も卒業なんだ。
分かっているけど彼女の言葉を聞いて、それをより実感する。
「俺も色紙欲しい」
「丹羽先輩は部活の後輩とかから貰ったんじゃないですか?」
「キョーちゃんから欲しい」
「色紙一枚を私一人が埋めるんですか?」
「そう」
「絶対無理です。そんなに書く事ないです」
「冷たいな。キョーちゃんは」
「仕方ないですね。
この紙のでいいですか?」
「なにそれ」
彼女がポケットから取り出したのはB5サイズの紙。
それを1/4に小さく畳まれていたものを広げている。
「えっと、地理の小テストです」
「…ほとんど間違ってンじゃん」
「苦手って言ったじゃないですか」
「まあ、俺らに世界の首都は関係ないよね」
「そうです。そういうことです」
人に勉強しろとか言うくせに、自分ではしてないのか。
それとも地理だけが破滅的に駄目なのか。
多分後者であろう彼女を見ると少し恥ずかしそうに俯いていた。
「じゃーもうそれでいいから頂戴」
「何、書きますか?」
「俺に聞いたら意味ないじゃん」
「えっと、じゃあ、まず
丹羽先輩へ」
「うん」
「いつも邪魔をしてくれて有難う御座いました」
「邪魔だったの?」
「そう。知らなかったんですか?」
「知ってました、俺はキョーちゃんの邪魔してました」
「先輩は背が低いので もっと成長してください」
「まあ、そうですよね」
「部活をサボるのはよくないです」
「まあ、そうなるよね」
「でも結構楽しかったです」
「そうなの?」
「はい。
後は…頑張って勉強してください」
「りょーかい」
彼女の特徴のある少し汚い字。
それを見せないようにか、ゆっくり、丁寧に書いてるつもりだろうが
やっぱりちょっと汚い字だった。
3年は午前授業に切り替わった。
でも、水曜日はお昼を過ぎても学校に残って、放課後図書室に行く。
「キョーちゃん、何してんの?」
「色紙書いてます」
「何の色紙?」
「委員会の先輩の卒業祝い」
そっか、俺も卒業なんだ。
分かっているけど彼女の言葉を聞いて、それをより実感する。
「俺も色紙欲しい」
「丹羽先輩は部活の後輩とかから貰ったんじゃないですか?」
「キョーちゃんから欲しい」
「色紙一枚を私一人が埋めるんですか?」
「そう」
「絶対無理です。そんなに書く事ないです」
「冷たいな。キョーちゃんは」
「仕方ないですね。
この紙のでいいですか?」
「なにそれ」
彼女がポケットから取り出したのはB5サイズの紙。
それを1/4に小さく畳まれていたものを広げている。
「えっと、地理の小テストです」
「…ほとんど間違ってンじゃん」
「苦手って言ったじゃないですか」
「まあ、俺らに世界の首都は関係ないよね」
「そうです。そういうことです」
人に勉強しろとか言うくせに、自分ではしてないのか。
それとも地理だけが破滅的に駄目なのか。
多分後者であろう彼女を見ると少し恥ずかしそうに俯いていた。
「じゃーもうそれでいいから頂戴」
「何、書きますか?」
「俺に聞いたら意味ないじゃん」
「えっと、じゃあ、まず
丹羽先輩へ」
「うん」
「いつも邪魔をしてくれて有難う御座いました」
「邪魔だったの?」
「そう。知らなかったんですか?」
「知ってました、俺はキョーちゃんの邪魔してました」
「先輩は背が低いので もっと成長してください」
「まあ、そうですよね」
「部活をサボるのはよくないです」
「まあ、そうなるよね」
「でも結構楽しかったです」
「そうなの?」
「はい。
後は…頑張って勉強してください」
「りょーかい」
彼女の特徴のある少し汚い字。
それを見せないようにか、ゆっくり、丁寧に書いてるつもりだろうが
やっぱりちょっと汚い字だった。