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言われてみれば、単純で。
第2章 君との出会いは、偶然で。
「そういえば、限定のあれ、今日はまだありますよ」

人懐っこそうな男の店員の一言にキョーちゃんの顔がぱーっと明るくなる。


「ホントですか? いつもないからねー」

「はは、そうですよね。藤崎さんいつも来る時間遅いからすよ」

「仕方ないじゃん。私だって忙しいの」

「こんな早い時間初めてじゃないすか?」

「ホント、久々に早く帰ってきたよー」


俺を放置してふたりで仲良く会話してる。
キョーちゃんは俺と話すときとは違うタメ口を使って話してる。
大人気ないけど、少し嫉妬。


「ねぇ、キョーちゃん」

意味もなく彼女を呼んだ。

キョーちゃんは視線をその男から俺に移す。
彼は席を離れオーダーを通しに行く。

「なんですか?」

「なんでもない」

「じゃあ、とりあえず、乾杯しますか?

...今日も一日、お疲れ様でした」


そう言って彼女は俺の持ったビールジョッキに
ロックグラスを静かに当てた。

ここは、再会に乾杯してくれないの?
まあ、社会人の乾杯の常套文句だから、仕方ないけど。


色々話して少しだけ酔いが回ってきたかな。
少し調子がよくなったところ。

アルコールのせいだろうか、頬をほんのり桜色にしたキョーちゃんが笑っている。
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