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言われてみれば、単純で。
第2章 君との出会いは、偶然で。
初めて会ったとき。
あの時もこうやって横並びで彼女のこと見てたっけ。

今みたいに、頬を桜色にさせてた。
今みたいに、アルコールのせいじゃなくてあの時は廊下を走ったせいだっただろうけど。


図書室で一緒にいたときも横並びだった。
殆んど人がいない図書室で勉強していた彼女。
その横で本を読む、それが当時1番好きな時間だった。

わざと彼女の邪魔をしては少し怒ったような声で名前を呼ばれる。
それが嬉しくて何度もそんなことしてた。
不意にその声が聞きたくなって嫌がるようなことを言う。


「俺、場数踏んだから上手いと思うよ?」

「丹羽先輩。そういうこと言わないで下さい。
私の綺麗な思い出を汚さないで下さい」

「処女でもあるまいし、そんなことで」

「まあ、そうですけど」

少しがっかりした。まあ、この年でそうだったらそれで心配だったけど。
嫌がるようなことを言ったつもりが俺の方が落ち込んでどうするんだよ。
だから悪戯に似た俺の言葉に拍車を掛ける。


「じゃあ、試してみる?」

「丹羽先輩と? 死んでも嫌です」

「死ぬほうが嫌だと思うんだけど」

「そんな事ないです」


彼女はそう言って新しく来たドリンクに口をつけた。
まあ、その返答は予想できてたよ。

あの時には持ち合わせていなかった色気と言うか艶っぽさが彼女に出来ていた。

伏せ目勝ちな瞳だとかぷっくりした唇だとか。
ちらっと覗かせる首筋から鎖骨へのラインだとか煙草を持つ指先とか。
まあいろいろ。
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