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言われてみれば、単純で。
第2章 君との出会いは、偶然で。
土曜。まあ基本は俺も休みだけど。
色々詰め込んだ数ヵ月先までの予定が入ってた。
どうでもいいものばかりだ。

そこら辺で知り合ったコと映画だとかドライブだとかいつも行くバーのイベントだとか高校時代の友人たちとの飲み会だとか。
キョーちゃんと一緒に居られることと比べるとどうでもいいことばかり。


どうキャンセルしていこうかな。
かわいい後輩のためだし、あの店主に『よろしく』って言われたし。
そう先ほど訳も分からずに聞いた言葉を自分に言い訳した。


「俺も暇にしとくよ」

「しとくって何ですか」

「キョーちゃん。明日は空いてる?」

「先輩。早速ですね」

「まあね」

「明日は空いてますよ」

「じゃあ今からうちに来る? もう日にち変わったからね、土曜だよ」

「まだ金曜の25時です」

「そういうこと言うんだ」

俺がなんと言おうとキョーちゃんは頑なに今は金曜日だと言っている。

そんな会話をして歩いてる間にいつの間にか俺のマンションの前。


「じゃあまた明日。11時以降なら大丈夫ですから」

彼女は向かいの建物。つまりは彼女の住むマンション。
それを指差して自分の部屋番を告げた。

どうやら家に来いと言うことらしい。
あれだけ避けといて家に入れるのは嫌じゃないんだな。

キョーちゃんは目の前の横断歩道を渡って向こう側の歩道へ歩いていった。
彼女はマンションのエントランスに入る前に一度だけ振り向いて少し大袈裟に手を振った。
俺が軽く手を振り返すと彼女の満足そうな笑顔。懐かしい顔だった。

彼女が無事帰宅したことを確認したし、俺も家に帰ることにした。
まあ目の前がもうマンションのエントランスなんですけど。



面倒だった明日の予定は風邪で体調が悪くなってドタキャンしよう。
俺は11時丁度にキョーちゃんの家へ向かうため
スマホの目覚ましアラームをセットして眠ることにした。


心地良いのはアルコールのせいだけではない。

彼女が不器用にスキップする後ろ姿を思い出しながら、俺は眠りに落ちていった。
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