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言われてみれば、単純で。
第3章 俺と君は、曖昧で。01
たまたま視線を戻したTVでは美味しそうな料理が並んでいた。
名前は知らないが何処かで見たことあるタレントが料理をしているようだ。
あんな不器用そうな手付きをした人間がこんな上手に盛り付ける訳がない。
TVってすごい。まあ、演出的な意味で。
少なくともこのタレントより俺のほうが料理できると思う。
あまり料理しないけど。
キョーちゃんの家のキッチンは結構充実してる。
何故知っているかというと彼女の家で煙草を吸うときは換気扇の下に追い遣られるからだ。
見てもよく分からない調理器具と調味料が所狭しと並んでいる。
物は多いはずなのに綺麗に整頓されている所為でそれを感じさせない。
まさに彼女らしい、そういった様子。
あの空間はキョーちゃんの縮図だ。
そんな事を思いながら、本を読んでいるキョーちゃんに話しかけた。
「キョーちゃんの好きな食べ物何?」
「えっと…ロールキャベツ?」
「それは難しそうだから無理だね」
「じゃあハンバーグ」
「うーん、面倒そうだから却下」
「何なんですか」
「いつもお邪魔させて貰ってるからご飯でも作ろうかと思ったけど
キョーちゃんは無理難題を押し付けるね」
キョーちゃんは、本を閉じて俺のほうを見上げた。
相変わらずソファに座らず床に座っている。
そして少し悩んでから答えた。
「じゃあオムライスがいいです」
「キョーちゃんはふわふわ玉子派?」
「あれ美味しいですよね」
「じゃあそれも無理」
「丹羽先輩我が儘ですね」
「料理嫌いだもん」
「じゃあ作るつもりになったんですか?」
ため息をついたキョーちゃんは先ほど閉じた本を手に取ろうとしていた。
それを取り上げて阻止する。まだ会話は終わっていないのだから。
「キョーちゃん家のキッチンに立ってみたいだけ」
「何でですか?」
「何となく」
うん。なんとなく。
彼女の縮図の中に、彼女だけの空間に俺は入り込みたかった。
部屋に遊びに来てるけど、ここよりももっと、キョーちゃんに近づきたい。
そんなことをなんとなく、とだけ表現した。
名前は知らないが何処かで見たことあるタレントが料理をしているようだ。
あんな不器用そうな手付きをした人間がこんな上手に盛り付ける訳がない。
TVってすごい。まあ、演出的な意味で。
少なくともこのタレントより俺のほうが料理できると思う。
あまり料理しないけど。
キョーちゃんの家のキッチンは結構充実してる。
何故知っているかというと彼女の家で煙草を吸うときは換気扇の下に追い遣られるからだ。
見てもよく分からない調理器具と調味料が所狭しと並んでいる。
物は多いはずなのに綺麗に整頓されている所為でそれを感じさせない。
まさに彼女らしい、そういった様子。
あの空間はキョーちゃんの縮図だ。
そんな事を思いながら、本を読んでいるキョーちゃんに話しかけた。
「キョーちゃんの好きな食べ物何?」
「えっと…ロールキャベツ?」
「それは難しそうだから無理だね」
「じゃあハンバーグ」
「うーん、面倒そうだから却下」
「何なんですか」
「いつもお邪魔させて貰ってるからご飯でも作ろうかと思ったけど
キョーちゃんは無理難題を押し付けるね」
キョーちゃんは、本を閉じて俺のほうを見上げた。
相変わらずソファに座らず床に座っている。
そして少し悩んでから答えた。
「じゃあオムライスがいいです」
「キョーちゃんはふわふわ玉子派?」
「あれ美味しいですよね」
「じゃあそれも無理」
「丹羽先輩我が儘ですね」
「料理嫌いだもん」
「じゃあ作るつもりになったんですか?」
ため息をついたキョーちゃんは先ほど閉じた本を手に取ろうとしていた。
それを取り上げて阻止する。まだ会話は終わっていないのだから。
「キョーちゃん家のキッチンに立ってみたいだけ」
「何でですか?」
「何となく」
うん。なんとなく。
彼女の縮図の中に、彼女だけの空間に俺は入り込みたかった。
部屋に遊びに来てるけど、ここよりももっと、キョーちゃんに近づきたい。
そんなことをなんとなく、とだけ表現した。