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言われてみれば、単純で。
第3章 俺と君は、曖昧で。01
ただ嫌な事を言ってやろうと思っただけ。
それに乗っかってこないのでなかった事にしておいた。

「キョーちゃん、その本楽しい?」

「まあ話題作ですから楽しいんじゃないですか?
って寝て下さいよ。丹羽先輩、邪魔しないで下さい」

「キョーちゃん、ちょっとだけ手貸して」

彼女の手を引き寄せて自分の頭に乗せる。
キョーちゃんはそのまま俺の髪を少しだけ撫でてくれた。


「丹羽先輩。今日は随分と馴れ馴れしいですね」

「まあね」

「何か…ありましたか?」

「うん色々ね」

「無理には聞きませんよ」

「ありがと」


キョーちゃんの手が俺の額から目元に落ちて瞼を瞑らせる。
部屋のライトが落とされた。

目を瞑っていても分かる。瞼の奥の闇がより暗くなったから。
カタンと照明のリモコンがテーブルに戻された音が響いた。

あんなに読みたがってた本を閉じてまで、本の読める環境を壊してまで俺に優しくしてくれてるのが信じられない。



「丹羽先輩は気を使いすぎなんですよ。
みんな分かってて甘えちゃってるんです」



「私も…一緒…かもしれませんね」

キョーちゃんの声が聞こえるようで聞こえない。

彼女の指先が俺の髪を梳かす感覚が心地よくてそのまま眠りに落ちていった。
幼い頃の母親に縋る安心感のようなものがあった気がしたけどあまり覚えていない。

ただ。すごくゆっくりとした時間のなかで優しい眠りについたことは間違いなかった。
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