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言われてみれば、単純で。
第3章 俺と君は、曖昧で。01
金曜。今日は疲れた。
嫌な仕事が重なった。周りの仕事の尻拭い。
関連会社に電話を掛けまくり謝罪を伝えた。
メールを確認して書類の修正。俺の担当じゃないのに。

デスクの上にたまった自分の担当の仕事を山を見ない振りをして必死に働いた。

だから今日のカレーはシンプルなカレー。箱の裏の説明通り。
スパイスを混ぜ合わせてごちゃごちゃやる気分にもなれない。

多分持ってきたワインの大半は俺が飲んだ。
あんまり覚えてないけどキョーちゃんが飲みすぎだと忠告してくれてた。
きっと、本当に飲みすぎていたんだと思う。
珍しく少し頭が痛くなった。

起きているのが面倒でソファに寝転がる。
慣れきったこの場所でぼんやりと天井を見ていると煙草を吸い終わったキョーちゃんが俺の枕元にもたれ掛かってきた。

本を広げてそこに視線を落とすキョーちゃん。
俺は痛みが響く頭に手をおいて彼女に話しかける。

「キョーちゃん。眠くないの?」

「別に眠くないですよ 。この本読みたいですし」

「あっそう」

「丹羽先輩はソファで寝ちゃいそうですね」

「うん。寝る、だろうね」

「いつも思うんですけどスーツシワになりません?」

「なるけどクリーニングだせばいいよ」

「そうですか」

「キョーちゃん。大胆だよね。脱げって言うなら脱ぐけど?」

「そういうことじゃないです」

「だって帰りたくないもん」

「なんですかそれ」

今はいつもより一人で居たくない気分。
まあ、そういう気分。多分。

不意にキョーちゃんに触りたくなった。
彼女の髪に手を触れた。
ワックスか何かでセットされた髪をめちゃくちゃにした。
そんなつまらない悪戯。

「キョーちゃんの髪はガサガサだね」

「それはセットして固めてるからです」

「ふーん」

「ちょっと引っ張らないで下さいよ」

「うん」

今日のキョーちゃんは余りきつく言わない。
言われたままにじっとしていた。珍しいね。

たまたまなのか、俺がそうさせたのか。
後者なら嬉しいんだけどその辺りは彼女しか知らない。

「眠たいなら寝てください」

「キョーちゃんと寝たい」

「はいはい。ここに居てあげますから」

それは俺が意図する意味ではないのだけれど。
そう言っておきながら俺も俺でそんな気分ではない。
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