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言われてみれば、単純で。
第5章 この崩壊は、突然で。
「パスタ、延びちゃいましたね」

「だね」

「私のせいですね」

キョーちゃんはまた俯くものだから俺は冷や冷やする。
また泣かせるわけにはいかないと、必死で取り繕う。


「キョーちゃんが作ったのものなら俺はちゃんと最後まで食べるよ」

「延びきったパスタもですか?」

「勿論。失敗しても焦げたって俺はちゃんと最後まで美味しく頂きますよ」

「やっぱり丹羽先輩は優しいですね」

本日何度目か分からなくなった言葉をまた口にした。

テーブルの上には一人前に満たないほんの少しのパスタとコンビニで買ってきたチーズと生ハム、ドライナッツ。
そしてチョコレート。

チョコレートはこの間キョーちゃんが好きだと言っていたので買ってきた。

キョーちゃんはそれらに見向きもせずひたすらワインを口にしている。
俺は彼女の作ったパスタを食べる。

繊細なキョーちゃんが作ったとは思えないほどガッツリとパンチのあるソースだった。
ワインに合う。多分合いすぎるくらい。
これは完全に酒好きが好む味付けだ。

隣をみるとキョーちゃんが此方を見ている。勿論ワイングラス片手に。
そのグラスが空になりかけていたのでワインを継ぎ足してやるとまたそれを飲み出した。

どんだけ飲むんだよ。本当に。

「丹羽先輩。美味しいですか?」

「うん。ワインに合うね」

キョーちゃんは久々に笑った。
満足そうな笑みを浮かべてまたワイン飲む。


「キョーちゃん。食べる?」

「食べます」

キョーちゃんは俺の方を向いて口を開けた。
なにそれ。食べさせろってこと?
あり得ない。キョーちゃんがそんなことするなんてある筈がない。

しかし目の前にいるキョーちゃんは確かにそうしてる。

本当に何が起きたかわかってないけどそう言うことならそうするしかないだろう。

キョーちゃんの口にパスタを持っていくと雛鳥みたいにぱくりと口に入れてもぐもぐしてた。
口の端に着いたソースを舌を使って舐めとり此方を上目遣いで見てくる。

本当におかしい。
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