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言われてみれば、単純で。
第6章 言われてみれば、単純で。
店主に言われるがまま店の中に入ると客は居なかった。
連休後で給料日前。そんな日は客が来ないんだと彼は言っていた。

あのとき座った席に案内される。
店主は俺の席の隣に、あの日キョーちゃんの座った席の反対隣に座った。
人懐っこそうな店員も健在で彼がビールジョッキとお通しを持ってきた。


「先輩さんお久しぶりっす」

「お久しぶりです。しかしこのお店はすごいですね。俺、1回しか来たことないですよ」

俺は思ったことを口にした。すると店主と店員は顔を見合わせて笑う。

「まあ、普通は覚えてないなあ」

「ですねー」

俺の頭に疑問符が浮かぶ。
店員は俺の顔を見てにやにやとしながらこう続けた。

「藤崎さん、大将のお気に入りっすから。
そんな彼女が男連れてきたんですよ? 忘れられるはずがないっすよ」

うるせぇ、そう言って店員の頭を叩いたあと店主は俺にビールジョッキを手渡した。
ガチャンと言葉もなしに乾杯をしビールを口につけた。

「藤崎ちゃんは年の離れた妹みたいなもんだよ」

店主はビールを飲みながら自分の言葉を確かめるようにゆっくり話す。
とても頼もしい感じがした。


「兄ちゃん。なんか食べるか?」

「いえ、キョーちゃん待ちます」

流石に其処までしてしまうと悪い気がする。


「キョーちゃん、ねぇー」

「何か変ですか?こんな歳にもなって。中学からのが抜けないんですよね」

「いやね。そう呼ばれたい人は決まってるから呼ぶなって言ってたよ、藤崎ちゃんは。
特に男からそう呼ばれるのは一人にしたいんだとか。名前にチャン付けなんて、一々否定したらキリがねぇよ」


何だか頭がついていけない話になった。

呼ばれたくないって。
俺はいつもこの調子で呼んでるし否定されたこともない。
いつからかと考えれば中学のときからこのままだ。
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