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言われてみれば、単純で。
第6章 言われてみれば、単純で。
俺は彼女の汚い字で書いてある『頑張って勉強してください』という文字を指先でなぞった。
何度も折り曲げては畳み、折り曲げては畳んでいる紙は千切れかかっていて、書いてある文字も薄っすらとしか見えないくらい。


「寂しかったら勉強しろって言ったでしょ」

「そうでしたっけ?」

「だから俺勉強してたんだよ、随分と」

「それは申し訳ないことをしました」

「全然。楽しかったし、いいよ」

なんとなく、そうただ、なんとなく。
俺が此処までこれたのは彼女の言葉の呪縛だと思う。



単純に考えれば、あの頃から、あの時握手を交わしたときから俺の中にキョーちゃんはずっと居た。
隣に居たいって、一緒に居たいって思ってた。


「キョーちゃん。また会えたね」

「そうですね」

「会えて、良かったよ」

「会えるとは思いませんでした」

「会えないって言ってたもんね」

「よく覚えてますね」

忘れていたことのほうが多いけれど、キョーちゃんと再会してから少しずつ思い出してきてるんだ。
あの時の出来事も、あの時の感情も。
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