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ただ一つの一対
第11章 オマケ 奇跡の少女
 
「あのね……お庭にあったお花のはちうえ、ぶつけてわっちゃったの。せっかくきれいなお花だったのに、れんのせいでめちゃくちゃになっちゃって……お花がかわいそうなの」

 大人達は鉢植えを壊した罪悪感で泣いているのかと思い込んでいたが、蓮が口にしたのは花へのいたわりだった。すると則宗は慌てた様子で部屋から飛び出し、蓮の壊した鉢植え用の椿を持って戻ってきた。

「それなら安心しろ。確かに落ちちまった花もあるが、ほら、まだここに蕾が残ってるだろ。根っこも無事だ。駄目になった訳じゃねぇ」

「……ほんとに?」

「ああ、俺の手にかかれば、これぐらいすぐに元通りだ。なんせこの鉢植えも、庭の方の木も、俺が育てたんだからな。なんだったら来週の休みに来てみろ、もっと色々見せてやるからよ」

 則宗が必死の説得すれば、蓮はようやく目を輝かせる。菖蒲から離れ則宗に抱きつき、笑みを浮かべた。

「おじーちゃん、ほんとにまた来ていいの!? 怒ってない!?」

「可愛い孫を叱る奴なんか、どこにもいねぇよ。ほら、せっかく用意したんだ、ケーキ食ってみろ」
 
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