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ただ一つの一対
第2章 少女は夢を見る
 






 部屋に戻れば、割れた皿は片付いていた。だが、片倉の姿はない。人気のない部屋に安心してしまった後、菖蒲は自己嫌悪に苛まれた。

「……片倉さんに、悪い事しちゃった。ごめんなさい」

 顔を上げていられなくてうつむいていると、菖蒲は床に血の跡を見つける。

「この血は……?」

「ああ、それは片倉ではなく僕の血ですね。ちょっと破片を踏んでしまって。大丈夫ですよ、大した怪我ではありませんから」

「あ、あたしのせいで……本当にごめんなさい!」

 菖蒲は平謝りすると、隅に置いていた自分の荷物を漁る。そして救急セットを取り出し、菊をソファに座らせた。

「あたしを探すために、手当てもしないで飛び出してきてくれたんだよね……こんな応急処置じゃ、お詫びにもならないけど」

 菖蒲は菊の足を取ると、赤くなった傷口を消毒する。処置していると、僅かに菊の足が跳ねた。

「そんな大げさにしなくても」

「だって、足は全ての基礎だよ。足が万全じゃなきゃなんにも出来ないもん」

 菖蒲は自分が剣道でよく足を使うためか、手際良く包帯を巻いていく。一方菊は、落ち着かない様子で何度も足をぴくりと跳ねさせる。
 
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