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ただ一つの一対
第3章 ただ一つの欠陥
 
 ベッドの上に先程まで着ていた服が散らばっているのが、唯一の汚点。しかし焦っていたから片付け忘れただけで、普段はそこも整理されているだろう。

 何気なく服に触れてみれば、まだぬくもりが残っているような気がした。菖蒲はベッドに腰掛けると、菊の抜け殻を抱き締める。他の男性相手では感じた事のない甘い匂いが鼻をくすぐり、菖蒲の心臓は鼓動を早めた。

 そして思い出すのは、先程のキス。魂を奪われるほど深く抉る感触に、全身が粟立つ。

「……ん」

 未知の刺激は、少女に新たな感覚を植え付けていた。下腹部に感じる湿り気。尿意ではないぬめりに、朧気な記憶が蘇る。

 どこで聞いたのかは忘れたが、男女が交わる方法。子を成すための手段として行われる神聖な行為と思っていたそれは、人のもっとも原始的な衝動から生み出される。

(あたし……感じてる、んだ)

 思い出すだけで締め上げられる心臓に、菖蒲は内心でうろたえる。だが腕に収まったままの菊の匂いは、菖蒲をどんどん色欲に落としていく。好奇心は、腕を動かし下半身へと向かわせていた。

(ここ……触ると気持ちいいんだよね?)
 
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