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写性 …SHASEI…
第10章 曼珠沙華
「お父様…花火が真っ赤な血のような花火が咲いてる。」


朝顔の水やりの季節を終えても、沙絵は草花の水やりを仕事にしていた。

「お母様の花が咲いたよ。」

びっくりした僕に沙絵が言い直す。血のような赤と言う表現にドキッとしてしまう。


食事を終えて庭に出る。沙織の記念碑に一本の曼珠沙華が咲いていた。

本当に夜空に咲く花火のようなスッとした花びらが外側から上を向く。内側には少し太めの花びらがクルンと下に垂れ下がる。

消え散らない花火…
秋を迎えた昼に寂しそうに取り残された花火のようだった。

それがまた侘しさを呼び起こす。墓地に咲く、人血を吸って赤く染まるなどと忌み嫌う言われのある花でもある。

球根で増え、葉より先に茎が伸び花の後に葉が出るから、世話をしなくても増える。そんなことから余計に不気味がられてしまうのかもしれない。


秋、賞をとった僕の元に、前触れもなく現れた沙織。
身重になってやつれた細身の体。
曼珠沙華はそんな沙織を覚えるのに、ぴったりの花だった。

当時は、例え他の男の子供を身籠って僕の元に来たことも含め、全く問題なく、貧乏学生で十分な暮らしが出来なくても、
二人で一緒に居られるだけで幸せだった。
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