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写性 …SHASEI…
第20章 影
僕たち、僕と沙絵が持っていた闇が、
互いに見ないようにし、傷を舐め合うようにして労りあうことで、逆に温存していた黒い影が、
沸々と煮えたぎり大きくなっていたことに、僕はまだ気づかずにいた。


貴女の体調を思い、昼御飯を共にするために、沙絵を一人にしてしまった。

突然現れた、水仙のような清らかさと強さを持つ貴女に、僕と同じ感性で絵に取り組む貴女に、一気に心を動かされた。

絵を教えるだけでも十分楽しいのに、貴女は絵のモデルに成りたい。自分を絵にして欲しいと言ってきた。

花には生命を宿らせるように、女性には欲の色を宿らせたい。

絵から匂い立つ色香を感じられるような絵を描きたい。

沙絵を描くことから始まって、妄想を加えた裸体画を仕事用に描いていた。

それを所望する顧客があり、応えて描いていたというのもあるが、
元来、絵描きになろうと思ったきっかけの、後世に残るような欲と美をもつ色絵や情画を、客のためでなく自分のために描きたいという願望もあった。

純粋そのものの貴女に、七五三の着物と沙絵のポーズをベースに時の経過と沙織のイメージを加えて描きあげた背面の女の絵を見せた。

着物の帯を解き、着物の片袖をずるりと落として肩を見せ、男を誘う女の色香を描いた絵。

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