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写性 …SHASEI…
第20章 影
泣きつかれて眠った沙絵は翌朝いつも通りだった。
沙織の名前も貴女のことも言わない。

何ともないはずはないのに、敢えて普段通りに振る舞っている沙絵に、貴女の話を蒸し返すことも出来なくて様子を見守っていた。

いや、見守るようでいて、実は僕は逃げていたのだ。

手伝いも良くしてくれ、日中は約束通り自室で勉強をする。貴女が帰ったあとは気持ち甘えてくるような感じもあったが、さして気になるほどではなかった。

こうして、僕は闇に囚われた沙絵を一人にさせてしまったのだ。

まさか、自分の存在すら危うく、僕と貴女の関係を探っているなど思いもよらず…


アトリエで見たあの人の絵、お母様とは見た目は全然違う人。
お母様が大学へ行くようになってからの苦しみ、結婚、お父様との再会によって、どこか陰をもった弱々しい控えめな感じと、

あの人の物静かそうな印象が似ているのではないか。

いや、全然似てないからお父様は惹かれてしまってのではないか。

そんなことばかり考えるようになった。

アトリエでの話し声は、お父様の声が僅かに聞き取れるだけだったが、

奥の部屋を開けて、お父様があの本をあの人に見せているのだとわかった。
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