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痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~
第6章 少女達の気持ち
 そんなわけで美緒ちゃんはここ最近、ずっとイタリア代表の試合のDVDを見続けている。
 今日も満腹亭で食事をしながら店内のテレビで一試合を見た。
 ヒデや池内なら上手に解説してくれるんだろうけど、俺だとなかなかうまくいかない。
 それでも美緒ちゃんが質問してくれば一生懸命答えた。

「今のプレイの意図は?」
「今、解説の人が言ってたのってどういう意味ですか?」

 などなど。食事の手を止めて画面に見入っていたかと思えば、俺も答えに困るような質問をしてくることもある。
 それくらいに美緒ちゃんのサッカー知識は深くなったし、サッカーを見る目も鍛えられた。

 そんなふうにDVDを見て話をしていたら、ずいぶん遅い時間になってしまった。
 美緒ちゃんは電車通学だ。俺は駅まで送っていくことにした。

「すいません、送ってもらっちゃって」
「ううん、ついでにコンビニにも行きたかったからさ」

 駅までの道中、なんとなく話をしながら歩いた。
 よっぽどサッカーが好きになったのか、サッカーが好きな先輩に好きになって欲しいのか、最近の美緒ちゃんはサッカーの話ばかりだ。

「ずいぶんサッカーに詳しくなったよね」
「あ、本当ですか?」
「うん。もう立派なマネージャーだね」
「えへへ。嬉しいな」

 街灯が照らす夜道。九月とはいえまだ夜になっても気温はそれほど下がらない。
 今夜も寝苦しい夜になりそうだ。

「もうさ、これだけ詳しくなったんだから、好きだった先輩に告白してみてもいいんじゃない?」
「え?」

 美緒ちゃんの目が大きく見開かれた。通りがかった車のライトが大きな瞳に反射する。

「…そう思いますか?」
「うん。きっとその先輩も喜んでくれるんじゃないのかな」
「そうですか?」
「そうだよ。だって美緒ちゃんみたいな可愛い子が自分の好きなもの一生懸命勉強してくれたんだもん。そりゃ嬉しいよ」
「…キャプテンでも嬉しいですか?」
「え、ああ、うん。そうだね、嬉しいと思うよ」
「そうですか…」

 小柄な美緒ちゃんは歩幅も狭い。

 美緒ちゃんに合わせて歩く。

 足が止まった。

「美緒ちゃん…?」

 さわり。風が吹く。美緒ちゃんの髪を揺らした。

「じゃあ言いますね。好きです、先輩」
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