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痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~
第7章 目指せ全国! 選手権予選開始!
 こんこん。

「よ、キャプテン」
「おう、名監督」
「迷監督?」
「違う違う。もう、いいから入れよ」

 あはは、と屈託なく笑って池内は窓枠をまたいだ。
 思えばこいつ、玄関から入ってきたこと一度もないよな。

「いよいよ明日だな」
「ああ」
「勝てそうか?」
「分かんね。でもやるだけやるよ」
「そうだな。ま、お前らあの時とは違うよ。今度は勝つ。絶対にな」
「池内が監督になったからか?」
「ああ、それがいちばん大きいよな」
「おいおい」

 また池内は笑う。

 池内はよく笑うようになった。相変わらず口調や物腰はヤンキー風味だけど、前よりも毒がなくなった。
 サッカー少女だった頃を俺は知らないけど、もしかしたら元々は素直な明るい子だったんじゃないのかな、と最近よく思う。怖くて本人には聞けないけど。
 何より一生懸命に真剣にサッカーに向かい合っている姿は、女の子に言う言葉じゃないかもしれないけどかっこよかったし、時々俺達と一緒にボールを追いかけて走る姿は溌剌としてすごく可愛かった。そしてすごく胸が揺れていた。

「冗談だよ。お前ら死ぬほど走らせてやったからな。あの頃の根性なしのお前らとは違うよ」
「ああ、ほんとになぁ…よく走ったよなぁ…」
「何なら尻に火を付けてやろうか? もっと早く走れるかもしれないぜ?」

 悪戯っぽくライターを放り投げてきた。

「おい、尻に火を付けるの意味が違わないか?」
「いや、キャプテンなら実際に火を付けられてもヘコまないかと思って」
「死ぬほどヘコむわ。ていうか、燃やされたらヘコんだ後死ぬわ」

 あっはっは。池内がタバコの煙を吹きながら笑う。

 何気ない、特に意味もない言葉のやり取りが心地いい。
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