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痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~
第3章 蘇れ、サッカー部!
 準決勝から一夜明けて。

 秋津高等学校は少しだけ静かになっていた。
 
 原因は…言いたくはないけどサッカー部だ。

 学校の誰もがサッカー部の快進撃を喜び、期待し応援してくれた。
 いよいよ全国出場をかけた大一番、準決勝。学校をあげての一大応援。

 そして惨敗。

 行き場のなくなった熱意は溜め息となって校内に充満していた。
 そんな空気の中で俺達サッカー部は「ああ、これが針のむしろって言うんだな」って気持ちを十二分に味わった。

 お疲れ様。残念だったね。まあ次があるさ。明日があるさ、明日がある。
 いろんな言葉を貰ったけど、どの言葉にも裏に溜め息が隠されている。

 俺はたまらなくなって休み時間のたびに教室から逃げた。
 同じように居心地の悪い教室から脱出してきたサッカー部員と屋上や部室で何となく過ごし、チャイムが鳴ればまた覚悟を決めて教室へと戻る。

 そうだ、思い出した。あの試合ってテレビ中継されてたんだっけ。
 親が録画してたはずだけど、多分一生見ることはないな。

 もちろん、そんな空気の中でサッカー部も活気を失った。
 勝ち進んでいたときには売るほどにあった勢いや賑やかさはどこかに消え失せ、みんなもう一回死んだゾンビみたいな顔で放課後の部室に何となく集まっている。

 ヒデは学校には来ていたけど、部活には顔を出さなかった。
 校内ですれ違った時、ヒデは俺達以上に落ち込んだ顔をしていた。もう一回死んだゾンビを見送る、悲しみに打ちひしがれたゾンビみたいな顔だった。

「あの…練習は?」
「うん…」

 美緒ちゃんの声にも上の空。あんなに力をくれていた彼女の声も何となく遠くに感じる。

「ああ、みんな揃ってたか」

 松木先生が珍しく部室に顔を出してきた。後ろに一人、茶髪の女子生徒を連れている。
 不貞腐れたような顔で、ジロリ、と俺を睨み付けた。

 すっごい可愛いんだけど…いわゆる不良少女ってやつだ。

「何か?」

 久しぶりに顧問の先生が部室に来たっていうのにゾンビの群れは誰も口を開かなかったので、ヤンキー少女の視線のプレッシャーを感じながらも例によって仕方なく、俺が先生の相手をすることになった。

 …キャプテンって損だよな。
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