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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②



「悟志さっ……」




菊野が小さく叫び絶句するのが聞こえ、皆がざわついている気配を感じながら、俺はフラフラと後ずさった。

悟志が、俺を忘れた――?

あんなに、俺に嫉妬の感情を剥き出しにしていた彼が――?



「パパ!笑えないボケだってば!ビックリさせないでよ――!!」



祐樹の高い声が聞こえ、真歩の困惑ぎみな呟きも耳に入る。



「……お医者様は、意識がなくて一月以上いた後遺症がひょっとしたら出てくるかも……て言ってたわよね」

「まさか……それで、剛くんの事を?」

「で、でも一時的かも知れないわよ!
明日になれば思い出すかも」


真歩に貴文、花野の声も聞こえるが、現実感だけが遠退いていく。

俺は本当に今、ここに居るのか?

この震える手も、寒気を覚える身体も実は俺の物でなく、借り物なのでは無いだろうか?――と思ってしまう程、俺は解離していた。




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