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愛しては、ならない
第45章 小さな逃避行

叩かれる寸前の所を間一髪でかわしてその手を掴むと、泣きが入った怒りの声が上から降り注ぐ。



「何で避けるの!」

「いや……俺も何で殴られなきゃならないのか分からない」

「それはっ……」



彼女は語気荒く何かを怒鳴るかと思えば口をつぐみ、両腕で身体を隠して俺の身体から降り、ベッドへ倒れ込んですすり泣き始めた。

俺は訳が分からずに身体を起こし、彼女に声をかける。



「夕夏……」

「西本君の馬鹿っ」



枕に顔を埋めたままで彼女は恨めしげに言った。



「いやだから……何で」

「女の子がご親切に自分から裸になって、しかも初めてを捧げようとしているのに、その反応は何よ――!」

「いや……だから」

「私、やせっぽちに見えて脱ぐと凄いでしょう?
自慢じゃないけど、自慢なのよ!!
本当にあげたい男の子を見つけるまで大切に取っておいたんだから――!」


彼女は枕を抱き締めて身体を起こし、俺を涙目で睨んだ。


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