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愛しては、ならない
第48章 喪われた記憶と


悟志の居る個室の扉をそっとノックしてから中へ入ると、彼は身体を起こしてベッドの背に凭れたままで眠そうに目をしばたかせている。

その様子が、遊び疲れて眠気と闘うこどもみたいでもあり、思わずクスリと笑ってしまった。

真歩と祐樹にずっと側に張り付かれていて、相手に疲れたのだろう。

『まだ帰りたくない』と膨れる祐樹だったが、花野と貴史に宥められ、渋々一緒に帰ったのだった。

私は今夜は特別に病室に泊まる許可を貰った。

悟志の隣に小さな簡易ベッドを置いてもらい、そこで眠る事になる。

一晩二人きりになるのが不安でもあったが、真歩がやたらと


『悟志さん、久々に愛しい妻とゆっくり話したいでしょ――?
私と祐樹がずっと悟志さんを離さなかったから、菊野もダーリンを独り占めしたいわよね――?
ね、今夜は、ここに泊まりなさいよ!私も一緒に看護士さんに頼み込むから!ねっ』


と言って、私が反対の意見をできる雰囲気ではなかった。

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