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愛しては、ならない
第52章 最後に、もう一度だけ



自分で決める――つまり、剛との事をどうするのか。悟志との事も。

考えなくたって答えは決まっている。なのに、心が追い付いてくれない。

もう、剛を愛していく事は出来ない。悟志をこれ以上傷付けられない。剛のこれからの為にも、あの二人の時間は無かったことにしなければならない。

でも、この家で一緒に暮らしていくのに、彼の姿を朝から晩まで見るのに、どうやって自分の気持ちを抑えたらいい?

どうしたら忘れる事ができる?



「ふ……っ」



涙が溢れてきて、ソファに顔を埋める。

昨夜、剛が消えてしまってから何度かメールを入れてみたが、やはり返事は無かった。

――皆、心配しています、どうか帰ってきて下さい――

ただそれだけの文。

本当は言いたい事はもっと他にあるのに。

――愛してます、愛しているの。
貴方に触れて欲しくないなんて、そんなの嘘よ。
早く戻ってきて、私を抱き締めて――



心の奥底では、そう叫んでいるのに。




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