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愛しては、ならない
第52章 最後に、もう一度だけ



「馬鹿……結局堂々巡りじゃない……同じ事ばっかり……繰り返して、何も変わらない」



諦める、と言いながら諦めきれず、事態を更に悪くしてしまっているのは自分ではないか。

自嘲的な気持ちになり、私はソファに顔を埋めたままで暫し身体を震わせてヒステリックに笑い転げるが、やがて疲れて、そのままうたた寝してしまった。

どのくらい眠っていたのだろうか。

玄関のドアがガチャリ、と開いた音がしたような気がした。

頭の何処かでは醒めているのに、疲れきった身体は言うことを聞かず、動けない。

瞼を開ける事も出来ず、リビングに誰かが入ってくる気配を感じとりながら、私はまだ横たわったままでいた。

フワリ、とシャボンの香りが鼻腔を擽ると、私は確信する。

この香りは――良く知っている……



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