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愛しては、ならない
第53章 最後に、もう一度だけ②



彼女が瞼を明けた時に俺は我にかえり手を離したが、彼女の甘い声を聞き、少し疲れを見せる陰る瞳に堪らなく欲情した。

彼女に触れるつもりなど無かった。これからどうするのか、俺の考えを話すだけのつもりだった。

だが、そんなのは無理だった。

当たり前だ――俺は、まだ貴女に焦がれているから……貴女に恋しているから――

この間俺に「触れないで」言った癖に、彼女の抵抗は中途半端だった。

胸を叩き、身体を捩ってみても、その甘く潤む瞳が、キスをすると応えてくるその唇が、舌が、俺を眩惑する。

菊野……貴女は、本当に嫌なのか、それとも俺を求めているのか、一体どちらなんだ?

止めなさい、と彼女が言ったが、その言葉はかえって俺を際限なく猛らせた。

彼女の震える声、唇が色香を放ち、正反対の事を言っている様に見えてしまう。

――私を、めちゃめちゃに乱して――


そんな風に俺を誘う様にしか――


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