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愛しては、ならない
第54章 四年後



ドアノブを廻してみると開いたので、祐樹は口を尖らせて呟く。



「おいおい……チャイムが鳴ってるのも分からないくらい耳が遠いわけじゃないだろうに~」



腰を降ろして靴を脱いでいると、華奢なピンクのミュールがキッチリと揃えられて置いてあるのに気付き、あっと思わず口を掌で押さえる。



「やば――お邪魔だったかな」



帰った方が良いだろうか、と腰を再び上げると、家の中から甘い声が聞こえてきて、祐樹の耳はダンボの様に大きくなった。

剛は相変わらずよくモテているらしいが、特定の彼女は今は居ない。

高校でクラスメイトだった夕夏という女の子と付き合って居たらしいが、剛が転校してからどうやら夕夏の方が浮気をしたらしく、別れたらしい。

だが、剛に言い寄ってくる女の子は後を絶えず、時々この家に押し掛けられる事も少なくないらしい。

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