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愛しては、ならない
第56章 二十歳の同窓会




『あいつ、母さんを襲ってたんだ』




祐樹の言葉を思い出しただけで全身が総毛立つ。

もしもその事を四年前に知ったとしたら、俺はどうしただろうか?

考えるまでもない。奴を徹底的にぶちのめしていた。

菊野は何故祐樹に口止めしていたのだろうか?きっと俺が激昂して奴に報復しに行くのを恐れたのか?




『菊野さんが、森本君に会いに行くらしいの』




そして、清崎が送ってきたあのメール。

俺はあのメールの文面を疑いもせず、菊野が森本と寝たのだと思っていた。

菊野が俺から離れようとしたのは、森本に心を移したせいだと思っていたのだ。

だが、別れ際の彼女のあの眼差しは、俺に恋を告げた時の物と同じに見えた。

抱けば抱く程に彼女の身体は悦び、俺を締め付けてきて――身体と心は別物だと言われればそれまでだが――

あの時の彼女の言葉と態度、表情に身体の反応が、全てちぐはぐで釈然としない。

今更疑問に思ったところでどうしようもないが……

祐樹の口から語られた事実に、その疑問を解くカギがあるような気がする。






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