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愛しては、ならない
第56章 二十歳の同窓会



もうすぐ九時になろうとしているのを時計で確認すると、スマホと葉書をポケットに入れ靴を履き家を出た。

早く家を出ないと、今日は確か昼間に菊野が掃除しに来る筈だった。

同窓会に行こうと思ったのは、森本と話をしたいのもあるが、彼女と鉢合わせしない為でもあった。

俺と菊野は直接連絡を取り合っていないが、祐樹が遊びにやって来た時に、菊野が掃除しに来る日を俺に伝えて来るのだ。

菊野が俺に会いたくないが為に祐樹にわざわざ伝えさせるのか、それとも逆の意味で――

俺に会おうとして、俺に会いたいと思わせる為にそうしているのか、わかりかねた。

いや、後者の理由ではないのだろう。あんな別れかたをした義理の息子に進んで会いたいと思う筈がない。

俺も、菊野とは会いたくなかった。いや、それは嘘になる。会いたい、と無性に思う夜もあるが、そんな風に彼女の事を考えないすむように、わざと忙しくしているのだ。

彼女にもし今会ってしまったら、俺はどうなってしまうんだ?

自分でも分からない。


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