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愛しては、ならない
第64章 エピローグ




ステージではまだスタッフが機材の調整をしていたが、待ちきれないと言った風に稲川がアコーステイックギターを手に、メロウなフレーズを鳴らしながら客達に笑顔を振り撒いていた。

あちこちから声援と口笛が飛ぶが、稲川が人差し指を口の前にあてて『静かに』という仕草をすると、会場は静まり返る。

稲川は満足そうな笑みを浮かべてマイクに向かって話し始めた。




「いやあ……雨から一転……青空が見えてきました……いいね、この雰囲気‼
もう俺らの出番がないかと思って実はさっきまで泣きそうだったんだけど……止んで良かった――あ――本当に良かった‼」



会場からドッと笑いが起きて、稲川は照れたように舌を出し、扇情的なメロデイーを鳴らし始める。

俺は思わず、手に持っていたフォークを落としそうになった。




「雨上がりにピッタリな、物悲しいけれどロマンチックなバラードを一曲……」



稲川は深呼吸して、歌い始めた。




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