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愛しては、ならない
第64章 エピローグ




その微笑みは 空に掛かる虹の様だ
  
遠くから見える姿は これ程に美しいのに

近付けば近付くほどに 霞んでいく 

追い掛ければ追いかける程に かたちを無くして

この手に抱こうとしても 掴めない





稲川が切々とバラードを歌い上げる中、誰かの「あ……虹」という呟きが耳に入り空を見ると、見事な虹が二重に空をまたいでいた。






「この手に抱こうとしても掴めない……か」




――菊野もこの虹を見ているだろうか。

彼女は今、笑っているのだろうか。

もしも幸せに笑っているならばそれでいい……





俺は眼鏡の位置を直す振りをして指で涙を拭った。




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