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愛しては、ならない
第65章 BEDTIME STORIES
 剛が一瞬目を見開く。その瞳の中に強い光が宿ったのを、菊野は見逃していた。

「きゃ」

 いきなり剛に抱き締められ、力任せに組みしかれる。
 先程までは彼を見おろしていたのに、今度は立場が逆転してしまった。
 
「ほら」
「え……?」

 剛はキョトンとする菊野の頬に触れてくすりとした。

「今も……そうやって……色んな顔を俺に見せてる」
「わ、私そんなに変な顔してるのっ?」

 菊野は思わず両手で顔を覆った。
 また剛は笑い、彼女の小さな手をそっと掴んだ。

「違いますよ……」
「???」

 戸惑ったようにこちらを見上げる菊野の手を握りしめ、胸に沸き上がる激しいいとおしさをもて余す。
 この人の笑顔、泣き顔、怒った顔、ほんの少しの瞬きでさえも、俺を虜にする。
 どんな表情も、この腕の中で見ていたいーー

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