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愛しては、ならない
第11章 蒼い覚醒



グッと詰まった私に、剛は悩殺する様な甘い瞳を向けて――
彼は無意識なのだろう――

手を差し出してきた。



「菊野さんからのバレンタイン、貰いますよ……」



「こ、これは違うから!」


私は絶叫して、剛に背を向けてリビングから逃げようとするが、カーペットの端に足を取られてしまいよろけてつんのめった。



「あああ」


「――危ない!」



剛が素早く腕を出したが、微妙に間に合わず、結局二人してひっくり返ってしまった。



「ん……っ」


「……」


床に頭をぶつけ、痛みに呻いた私は、唇に何か当たっているのに気付き、瞑っていた瞼を開けると、すぐ其処で澄んだ剛の瞳が私を捉えていた。


「――!」


彼の瞳が、何故こんな近くにあるのか、真っ直ぐな髪が何故頬に触れているのか、唇が塞がれているのは何故なの――?

と軽くパニックになりかけたが、彼が私の上に覆い被さる形になり、偶然唇が当たってしまったのだ、とようやく理解する。


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