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愛しては、ならない
第11章 蒼い覚醒




床にポタリ、と温かい涙が堕ちる。



剛は瞳を揺らし、近付いてくるが、私は、首を振り更に後ずさった。



「……すいません……
驚かして……」



剛は小さく呟くが、前にもこんな事を言われた様な気がして、私は唐突に笑いが込み上げてきた。


「あ、アハハ……
ふふ……ゴメンね……
ふ、ファースト……キスが……
こ、こんなおばさんで……っ」


笑いながらも涙は止まらず私は口を押さえてしゃくり上げる。



剛が今どんな顔をしているのか怖くて見る事が出来ずに、私はただフローリングに涙が堕ちる様を見詰めた。



「……いえ、初めてでは、ないですから……」



剛のその言葉に、抉られた様な痛みを目の奥に感じ、私は呻いた。



「……い、痛いっ……」


「菊野さん――?」


剛が肩に手を掛けてきた時、私は飛び退く。


「……だ、大丈夫……
少し休めば、治るから……」


私は、這うように剛の側をすり抜け、寝室のドアを開けベッドへ倒れ込んだ。





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