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愛しては、ならない
第11章 蒼い覚醒




剛は、菊野の唇が触れた自分の唇をそっと指でなぞり、彼女の戦慄く表情と流した涙を思い浮かべ、胸が痛むのと同時に身体がゾクリと震えた。


清崎とキスした時とは、まるで違った――


偶然とは言え、唇が触れ合いそのまま見詰め合ってしまったが、菊野は嫌だったのだろうか?


"こんなおばさんと……
ファーストキスだなんて……ゴメンね"


剛は首を振る。



「そんな風に……
思うわけ、ないじゃないか……
俺は――」


俺は、と言い掛けてその次の言葉が見付からず、溜め息を吐き、剛は喉を潤そうとキッチンへ足を向けた。


すると、オーブンの側に騒ぎの元凶となったチョコレートが置いてある。

無惨に二つに割れてしまって居たが、剛は手に取ってその欠片を合わせて見て、描かれた文字を読み上げ、瞳を揺らした――


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