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愛しては、ならない
第14章 檻の中の愛
菊野は、焼けた卵焼きを差し出し、ぎこちなく、だが優しい、俺が蕩けてしまいそうな笑みを向けた。
「はい、剛さん……」
「ありがとうございます」
俺は皿を受け取り、甘い幸せと苦さを同時に噛み締めていた。
例え作り笑いだとしても、貴女のその笑みにどうしようもなく舞い上がり胸が踊る。
その一方で、それ以上の事を望んでしまう自分が居る。
貴女の全てを欲しい、と思う身勝手な無責任な恋情が止まらない。
「あ~ママ、味噌汁に茄子入ってる~!
俺、キライなのに」
「あら、小さくしたのにバレちゃった?」
「分かるよ普通!
……なんか、今朝は茄子の気配がキッチンに漂ってる気がしてたんだ!」
「フフフ……気配があるのねえ、面白いわあ……」
「面白くないよ!」
コロコロ笑う二人を横目に味噌汁を啜りながら俺は思う。
――やはり、壊してはならない。
この人達を。
壊れる前に、邪魔な異物は取り除かなくてはならない……
邪魔なのは、そう、俺だ……
俺が、居なくなれば、済む事だ――