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愛しては、ならない
第14章 檻の中の愛
「はいはい分かったよ……俺の負けです」
祐樹の頭をポンと軽く叩くと、頬を緩ませ屈託無く笑い、菊野もそれを見てクスクス笑っている。
祐樹の天真爛漫さが眩しくもあり、時に憎らしく思う事もある。
菊野は、祐樹に兄弟を与えたくて面差しの似た俺を引き取ったが、顔は似ていても、心の有り様が全く違うのは如何ともし難い事実だ。
菊野は、祐樹の様なつるんとしたあどけなさと溌剌さを持つ子供を欲しかったのかも知れない。
だが、俺にはほど遠い虚像にしか思えない。
――虚像か……
そうだ。
この家の今の姿は中身の伴わない作り物だ。
表面だけは、平穏な家庭に見えても、俺が起こしたさざ波が少しずつこの家を揺らし、やがて崩壊に導くのかも知れない――