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愛しては、ならない
第25章 離したくない
「落ちたのにどや顔ですか……
何なら、真歩先生に一緒に英語を習ってみましょうか?」


冗談で言うと、菊野は両手を高々と挙げて叫んだ。

「いいも~ん‼
女の子は、頭のよさよりも愛嬌だって……さと……しゃんが……」



ーー悟志?


今、二人だけの時間(とき)に耳にしたくない名前だった。


こんなことを思うのは、酷いのかもしれない。俺は菊野と悟志に養われている子供で、特に彼には感謝をいくらしても足りない程、恩を感じているのも真実だ。
だが、一方では、菊野を悟志から奪ってしまいたい欲で身も心もはち切れそうな自分が居る。



上品で静かな雰囲気のレストランで、菊野のすっとんきょうな高い声は響き、周囲の客たちがちらり、とこちらに目を向けたが彼女は全く意に介して居ない様子で、ワインを飲み干す。


テーブルを小さな手で軽く叩き、上目遣いで俺を見詰める。

いや、睨む、と言った方が正しいかもしれない。
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