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愛しては、ならない
第25章 離したくない


菊野の瞳から、遂に大粒の涙が零れ俺の指を濡らした。


本当なら、その唇を指ではなく、キスで塞ぎたい。

烈しく、熱烈に、その小さな唇を吸い、舌を絡めとりたい。

何も考えられなくなるまで、彼女をキスで、抱擁で酔わせたい……




だが、俺も理性をギリギリのところで辛うじて保っていた。


少なくとも、今はまだ。




部屋の前まで来ると、菊野はようやく今の状況を理解したようだった。


鍵を開けようとする俺を不安げな表情で見上げる。



「あ、あの……」


俺は、返事をせずにゆっくりと鍵を回してドアを開けた。




部屋の灯りを点けると、中央のダブルベッドが否応なしに目に飛び込んでくる。



俺の腕の中で菊野が息を呑んだ。
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