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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない


「どうしたのよ、間抜けな顔をして~」


真歩は、まるで粗相をした小さな子供に言うように語りかけて立ち上がり、私の足元に落ちたガーベラを拾い上げた。


「今日はね、生徒さんが急にキャンセルになったのよ。
暇だし、悟志パパのひげ面でも見ようかと思って来ちゃった。
……そしたら何よ、昨日花野ママか看護婦さんに剃って貰ったのかしら?
ツルツルなんだもん。
私さあ、無精ひげの感触が好きなのよ!!
……実はひげフェチなのよ……
ボーボーのじゃなくて、普段ちゃんとしてる男のひとがたまにチョロチョロ生やしてる、て程度がいいの!!
触ってたら、その刺激で生えて来ないかな~て、思わずスリスリしちゃった!!
内緒だからね?もし悟志さんが目を覚ました時にも、私の趣味をばらしたりしないでよ?」


「う……ん」


私は、いつもの様に悪戯っぽくくるくる表情を変えながら話す真歩に、やっとの思いで相槌をうつ。



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